管理者の役割を見失うリーダーたち
なぜ、メンバーは自律的に動けず、指示待ちの状態に陥ってしまうのでしょうか?
与えられた業務を単にこなすだけになってしまうのはなぜでしょう?
その根本的な原因は、リーダー自身が、日々の業務に追われるあまり、本来最も果たすべき役割を見失っているからかもしれません。それは、組織の未来を指し示し、その進むべき道に意味を与える「ビジョンを語る」というリーダーシップの根源的な役割です。
多くの管理職は、メンバーマネジメント以外に自らプレイヤーとしての業務に忙殺されています。もちろん、これも重要な職務です。
しかし、それだけに終始してしまうと、組織は羅針盤を失った船と同じになります。どこに向かっているのか、なぜこの業務をやるのかという「意味や意義」が共有されなければ、メンバーのエンゲージメントは高まりません。ただ残念なことに、多くのリーダーが「ビジョンを語る」という役割を後回しにしてしまっています。
リーダーシップの空白が生まれる3つの構造的な原因
では、なぜリーダーたちは、「ビジョンを語れない」状態になっているのでしょうか?
そこには、個人の資質の問題だけでなく、組織に根ざした3つの構造的な原因が存在します。
1)リーダーシップを育成する機会の不足
多くの企業では、リーダーシップはOJTで自然に身につくもの、あるいは個人の性格特性に左右するものと見なされがちです。組織のビジョンを描き、それを自身の言葉で語るというスキルは、誰も教えてくれません。「個人任せ」にされた新任管理職は、手探りの状態で、やり慣れたプレイング業務に比重を置いてしまうのも無理はありません。
2)短期業績主義の圧力
多くのリーダーは、経営層から日々、目先の業績向上を厳しく求められます。「ビジョンを語る」といった中長期的な活動は、業績が苦しい時ほど「そんな暇があったら数字を作れ」という無言の圧力の前にかき消されてしまいます。会社からの期待が「業績管理」に偏っていると感じれば、リーダーがそちらに注力するのは当然のことと言えます。
3)メンバーが内面に抱える熱意への無理解
リーダー自身が、ビジョンを語ることの真の重要性を認識していないケースが多いように感じます。メンバーは単なる労働力ではありません。自分の仕事に「意味や意義」を見出したいと切望しています。360度フィードバックのフリーコメントには、そうしたメンバーからの「静かなSOS」が数多く寄せられます。
「経営方針をそのまま伝えるだけでなく、リーダー自身の言葉で、この組織がどこへ向かうのか、どうしていきたいのかを聞かせて欲しいです」
「組織の目指す姿を熱い気持ちを持ってお話いただければ嬉しいです。更にやる気が高まり頑張れます」
これは、単なる要望ではありません。自分の仕事に誇りを持ち、自律的に貢献したいと願う、メンバーの心からの切実な声なのです。
声は届いているか? – 360度フィードバックという「測定器」
メンバーの渇望に応え、勇気を出して「ビジョンを語る」と決意したとします。
しかし、そこで新たな壁が立ちはだかるでしょう . . . .
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