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組織変革につながる「場」の設計と思想

  • ビジネスコラム

渡すだけでは意味がない  – 人事施策が形骸化する構造

360度フィードバックを導入したものの、継続して実施していく中で、「期待したほどの効果が見られないのではないか」「継続しても、あまり変わらないように感じる」といった声が現場から聞かれる企業は少なくありません。

その原因の多くは、一つの共通した課題に行き着きます。

それは、フィードバック結果を対象者に「渡しっぱなし」にしてしまっていることです。

これは、健康診断の結果報告書を本人に郵送するだけで、医師からの説明や生活習慣改善の指導を一切行わない状況に似ています。

どんなに精密なデータが記されていても、受け取った本人がその意味を正しく理解し、行動を変えるための動機付けがなければ、報告書は机の引き出しにしまわれるだけで終わってしまいます。

特に、360度フィードバックの結果は、時として本人にとって耳の痛い内容を含むため、強い抵抗感や不安を伴います。

自己と向き合う機会を意図的に設けなければ、「都合の悪い結果から目をそらす」「結果の活用を個人任せにする」といった事態を招き、施策全体が形骸化するリスクは避けられません。
360度フィードバックの真価は、その結果をいかに扱い、人々の内省と行動変容に繋げるかという「プロセスデザイン」、とりわけ「場」の設計にかかっています。

個人の「内省」を促すための『閉じた場』  – フィードバック研修の絶対的価値

効果的なプロセスデザインの第一歩は、対象者が安心して自分自身と向き合える、守られた環境を創り出すことです。私たちはこれを『閉じた場』と呼びます。

その最も代表的なものが「フィードバック研修」です。

フィードバック研修は、単なる結果の説明会ではありません。それは、ファシリテーターのガイドのもと、参加者が自身の行動に対する360度フィードバックの結果と真摯に向き合い、その背景にある意味を深く探求するための「内省の儀式(重要な機会)」です。

この『閉じた場』では、まず360度フィードバックという手法そのものへの不安や疑念を払拭し、「これは自分を批判するためのものではなく、成長のためのギフトである」という認識を共有します。

守られた環境の中で、参加者は自身の強みを再認識し、また、これまで気づかなかった課題や、自身の意図と周囲の認識とのギャップに気づきます。そして、その気づきを具体的な行動目標へと落とし込んでいくのです。

確かに、研修の実施は人事部門にとって大きな労力を要します。
しかし、この手間を惜しむことは、施策全体の効果を軽視することに等しいと言えるでしょう。個人の深い内省と「変わる覚悟」を促す『閉じた場』の設定は、組織変革の土台を築く上で絶対に欠かせないプロセスなのです。

「内省」を「関係性」へと繋ぐ『開かれた場』  – 職場報告会という次なる一手

個人の内省を促す『閉じた場』で得た気づきや決意は、それだけではまだ不十分です。
そのエネルギーを、今度は職場というリアルな人間関係の中に持ち込み、周囲との関わりの中で昇華させていく必要があります。

そこで有効となるのが、 . . . . .

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